北海道大学 放射性廃棄物処分勉強会

- 2018年度 幌延深地層研究センター見学会 報告 -

この度、原子力バックエンド教育プログラムや一般教育演習「オープン教材を活用して学ぶ放射線・放射能の科学」における反転授業などで教材開発・技術支援を行なっている工学研究院原子力環境材料研究室が実施する、原子力発電環境整備機構(NUMO)「地層処分事業の理解に向けた選択型学習支援事業」の一貫として行われた放射性廃棄物処分勉強が、センターで開発された予習教材を用いて開催されました。以下、報告書を掲載致します。

(1)勉強会目的

施設見学および意見交換会を通じて、原子力バックエンドへの理解を深め、施設での厳密な安全管理の実態を知る。また、それらの施設に従事している研究者、技術者との交流を通じて、安全管理に取り組む姿勢、原子力バックエンド事業の重要性や最先端の研究開発の現状を学ぶ。なお、本勉強会は、原子力発電環境整備機構(NUMO)「地層処分事業の理解に向けた選択型学習支援事業」の支援の下で実施した。

(2)見学会実施内容

■見学先
幌延深地層科学研究センター(北海道天塩郡幌延町)
■参加者
北海道大学 放射性廃棄物処分勉強会(計17名、原子力環境材料学研究室の教職員・学生5名、一般教育演習履修生7名を含む)
■実施日時
平成30年10月28日(日) 13:00~16:00
■見学内容
幌延深地層科学研究センター(ゆめ地創館見学、地下坑道入坑)

(3)意見交換会実施内容

■実施場所
日本原子力研究開発機構 幌延深地層研究センター 国際交流施設
■実施日時
平成30年10月28日(日) 9:00~11:00
■参加者
北海道大学 放射性廃棄物処分勉強会(計17名、原子力環境材料学研究室の教職員・学生5名、一般教育演習履修生7名を含む)および解説者:3名(日本原子力研究開発機構職員)
■意見交換内容
深地層研究の現状とその技術

(4)勉強会成果

■事前勉強
参加者は事前に以下のビデオ教材にて学習を行った。
・原子力人材育成事業(*) #03「放射性廃棄物処分工学」
講義7:深地層研究施設での研究開発(藤田 朝雄先生・日本原子力研究開発機構)
https://ocw.hokudai.ac.jp/lecture/backend-radioactive-waste-disposal-engineering
<その他、参考となる教材>
・原子力人材育成事業(*) #03「放射性廃棄物処分工学」
講義1、2:(大江 俊昭先生 ※旧所属 東海大学工学部原子力工学科)
https://ocw.hokudai.ac.jp/lecture/backend-radioactive-waste-disposal-engineering
・原子力人材育成事業(*) #03「放射性廃棄物処分工学」
講義4:放射性廃棄物処分工学3(鈴木 覚先生・原子力発電環境整備機構)
https://ocw.hokudai.ac.jp/lecture/backend-radioactive-waste-disposal-engineering
・原子力人材育成事業(*) オープン教材の活用による原子力教育の受講機会拡大と質的向上
講義1:高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する科学的特性マップについて
(兵藤 英明先生・原子力発電環境環境整備機構)
https://ocw.hokudai.ac.jp/lecture/nucl-eng-open-ed
■質問
参加者から出された主な質問は以下の通りであった。
・オープン教材「講義7:深地層研究施設での研究開発」中で言及されていたプロジェクト全体の予算。
・現在進行中のプロジェクトの目的、および具体的なプラン。
・将来的にどのような人工バリアを実現したいのか。
・幌延町に研究施設を建設するにあたって、地元住民や自然保護団体などからの反対はなかったのか。
・もし北海道に放射性廃棄物の処分場を建設するとしたら、どのような場所が想定されるのか。
・そもそも何故、幌延町に研究施設を建てることになったのか。
・オーバーパック腐食試験において、数ヶ月前に試料の分析へ移ったとの事だが、最新の結果等はあるか。
・物質移行試験において、幌延では放射性トレーサーを使わないとのことだが、放射性トレーサーを使った試験を何処か別の施設で行う予定はあるのか。
・半減期200万年超の放射性廃棄物を地下に隔離処分するというのは後の世代(人類でないかもしれない)に対して重大な障害を押し付ける事になると思います。この点に関して、なにか回答は出されているのか。もしくは将来的にこの問題を解決する見立てがあるのか。
・廃棄物を地下に埋めるに当たって、埋め立てに課せられた条件などはあるのか。
・放射性廃棄物の管理については問題がいくつかあるように思えるが、それに対する今後の見立てが存在するとしたら興味がある。
・人工バリアについて、低アルカリ性のコンクリートを使用したと講義の中にあったが、なぜ普通のコンクリートではなく、そのようなものを使うのか。
・そもそも数ある堆積岩の土地の中でなぜ幌延が深地層研究の対象になったのか
・放射性廃棄物は放射性の度合いに応じて危険なものほど深くに埋めているとあったが、埋める深さの具体的な数字について、どのようなことを根拠に深さを決定したのか。
・放射能廃棄物の管理に関して、ほかの分野に類を見ないほどの長期的計画が求められることと思うが、そのような特性を持つ放射性廃棄物処分工学独自の視点にはどのようなことがあるのか。
・放射線廃棄物処分場は国内でどれ程のキャパシティがあり、どの程度の量の廃棄物を処理できるのか。
・放射線の半減期を早められる可能性はあるのか。
・幌延と岐阜県に2つ深地層研究施設があるとのことでしたが、現段階でどちらの環境がより優れているなどがわかっているのか
・青森の日本原燃の施設で見学した余裕深度処分の施設より幌延の深地層研究センターでの施設の方が3倍以上深いところまで掘削しているが、費用や余裕深度処分と比較して気をつけているところはあるのか
・坑道を掘削し、埋めなおしてプラグを入れるまでの一連の作業はどれくらいの時間がかかったのか。
・プラグを入れて水漏れを防ぐ、とあったが、実際の地層処分でも漏れないような方法で処分するのか。また、漏れてきてしまった時の対策などはあるのか。


見学前の意見交換会①
(2018年10月28日 於・幌延深地層研究センター 国際交流施設会議室)


見学前の意見交換会②
(2018年10月28日 於・幌延深地層研究センター 国際交流施設会議室)


幌延深地層研究センター見学説明会(2018年10月28日 於・ゆめ地創館)


ゆめ地創館展示物説明(2018年10月28日 於・ゆめ地創館)


深度350m調査坑道見学(2018年10月28日 於・幌延深地層研究センター)


集合写真(2018年10月28日 於・幌延深地層研究センター)