共同開発

オープンエデュケーションセンター「オープン教育開発部門」では、教職員のニーズに応じて「オープン教材(OER)の開発」、「オープン教材を用いた授業支援」、「学習環境の提供」を行っています。

オープン教材(Open Educational Resources : OER)とは、インターネット上で誰もが自由に使えるデジタル教材です。オープン教材は、用途や学習目標にあわせて設計し、目的にあったプラットフォームで活用します。

以下、「オープン教材(OER)の開発」、「オープン教材を用いた授業支援」、「学習環境の提供」について、紹介します。

オープン教材(OER)の開発

オープン教育開発部門では、おもに効果的なハイブリッド型学習の実現を視野に、ビデオコンテンツを中心としたオープン教材(OER)の開発を行なっています。

開発できるオープン教材(ビデオコンテンツ)は、教室での講義を収録したもの、教材設計を施してスタジオ等で収録するもの、手技やフィールドワークをロケーションに合わせて収録するものなど、さまざまです。

教材開発に関わる収録設備については、以下のリンクをご参照ください。
>> 収録設備


教材開発のステップ


教材開発の主なステップは、次の通りです。教材を「どこで・誰に・何を」提供するのかを明確にしたうえで、教授設計理論(ID)に基づいた教材設計、著作権処理、収録、編集等を行います。

ステップ1:打ち合わせ

教材制作の目的を明らかにし、企画案を練ります。打合せは、教材設計後も含め数回にわたることもあります。

ロケの場合、実施場所の下見を行い、機材のセッティングや当日の人員調整など、撮影に向けた検討を行います。

打合せの様子
ロケ地の下見の様子

ステップ2:教材設計

講師から講義資料を提供いただき、教授設計理論(ID)に基づいて教材を分析・構造化します。課題(クイズ)・学習目標などを設定し、映像教材化の際のポイントを明らかにし、授業や課題の実施方法も提案致します。ロケやPVの制作では、絵コンテ作成を行う場合もあります。

IDにおける学習目標の分類
絵コンテ例

ステップ3:著作権処理

著作物の調査、利用許諾申請などを行います。差し替えが必要な場合は、資料の作成や素材の情報提供を行い、講義の本質を損なわないよう柔軟かつ適切な著作権処理を行います。  

著作権調査の様子
著作権調査記録

ステップ4:収録

専任のスタッフが、教材それぞれに合った方法で講義・演習・実験を撮影します。スタジオ(S9)や講義室(S8)などでの収録が可能です。学内・学外各所でのロケにも対応します。

オープン教育開発部門が保有する収録設備については、以下のリンクをご参照ください。
>> 収録設備

S9スタジオ内
S9スタジオ卓

ステップ5:編集

専任の編集スタッフにより、収録した映像と講義資料を合わせて、学習に効果的な動画編集を行います。教材設計者と編集者で検討を重ね、理解を補助するアニメーションやイラストなどについても制作することがあります。

編集画面と作業者
実写とイラストを合わせた編集例

ステップ6:公開

完成したオープン教材(OER)は、希望する公開先にアップロードするか、データで納品します。教材の視聴履歴を取得するなど、学内限定のオンデマンド授業や反転授業に利用する場合はELMS(Moodle、mediasite)、学内外向けに広く教材を公開する場合は北海道大学オープンコースウェア(OCW)など、教材の用途にあわせて公開先を提案します。

北海道大学内で利用する授業支援システム
広く一般に教材を公開する北大OCW

 

オープン教材を用いた授業支援

主に北海道大学の教員や部局、教育プログラムと共同で、効果的なハイブリッド型学習の実現を視野に、オープン教材(OER)を活用した授業の開発、実施支援、学習評価の支援などを行います。

学習環境の提供

開発したオープン教材(OER)は、目的にあわせて、OECで管理・運用しているプラットフォームで利用しています。
主なプラットフォームは、北海道大学の教職員が利用する「教育情報システム(ELMS)」、北海道大学の学びを学外に向けて公開する「北海道大学オープンコースウェア(北大 OCW)」、誰もがネット上で講座を受講できる「大規模公開オンライン講座(MOOC)」の3つです。


教育情報システム ELMS・Moodle


教育情報システム(ELMS)は、北海道大学の教職員が利用する全学向けの教育学習システムです。

ELMS は学内に設置された 998台の教育用端末のほか、学生用のポータル機能や Moodle を用いた教育情報システム、G Suite for Education を用いたグループウェアによって構成されるウェブサービスを提供しています。2020 年度以降、コロナ禍に伴ってオンライン講義が急増し、数多くの講義が配信されています。

北海道大学オープンコースウェア(北大OCW)


北海道大学オープンコースウェア(北大 OCW)は、北海道大学における「学びのいま」を公開する、コンテンツ配信プラットフォームです。中高生など一般向けのセミナーから、本格的な講義まで、幅広く北海道大学の学びを提供しています。開発したオープン教材を北大OCWで公開し、授業に利用している先生もいます。

動画配信を主とする北大 OCW では、ストリーミングサーバーとして「Kaltura」を導入し、著作権の関係上、違法な動画ダウンロードなどができないよう管理しています。

大規模公開オンライン講座(MOOC)


MOOCとは、インターネット上で公開される、世界中、誰でも受講できるオンライン講座のことです。OEセンターでは、映像教材の制作と教材設計、開講中のサイト管理、事務手続きを一手に引き受けています。また、MOOCの教材の多くは学内での反転授業でも使用されており、繰り返し活用することで視聴ログ取得やアンケートを実施し、エビデンスに基づく教材改善を行うためのデータを蓄積しています。学内で利用された教材を学外でも再利用することで、高等教育の機会を広く一般に提供しつつ、学習履歴データを蓄積し、それに基づいた研究を行っています。

デジタルリテラシー入門(2022)

デジタルリテラシーとは、デジタル化した社会を生き抜く力のことです。本講座では、なかでも、「デジタルツールを活用してアイディアをかたちにし、他者と共有する能力」である「デジタルコンテンツクリエイション」について、4週にわたって学びます。そして、現状をより好ましいものに変える「デザイン思考」の視点に立ち、デジタルツールを活用してアイディアをかたちにし、他者と共有することができるようになることを目指します。
>> デジタルリテラシー入門

 

ハイブリッド型授業をはじめよう(2022)

オープンエデュケーションセンターでは、コロナ禍以降、学内向けにハイブリッド型授業を設計するためのセミナーを実施してきました。本講座では、それらの実践をふまえてあらためて内容を整理しました。ハイブリッド型授業の実施方法、学習状況の把握や評価のポイントなどを紹介し、対面での講義や研修をハイブリッド型授業に作り変える方法実際に教育の場で実践できることを目指します。
>> ハイブリッド型授業をはじめよう

 

事例紹介 Effects of Radiation(2015)、放射線・放射能の科学(2020/2021/2022)

「Effects of Radiation(環境放射能基礎)」の日本語版を学内の反転授業での運用を経て、新教材に加え、課題等を改良し、工学研究院および獣医学研究院の教員8名による講義「放射線・放射能の科学」を、日本における代表的なMOOCプラットフォームgaccoにて2020年3月に開講しました。センターでは新教材の教材設計、撮影・編集、新PVの制作、開講後の運営を担当しました。また学内では反転授業などで、日本語版MOOCも20年の開講以来、毎年再利用を行い、受講者からの声や成績データに基づき、内容や課題を改定しています。

 

事例紹介 戦争倫理学(2017/2019)

gaccoにおいて2017年3月に、文学部文学研究科 応用倫理研究教育センター准教授(当時、現広島大学)眞嶋先生による「戦争倫理学」を開講しました。2019年3月には改良版が再開講されました。センターは教材設計(一部教材内容)・課題の作成、教材収録・編集、PV制作、開講後の運営を担当。講座の目標とした受講者同士の議論を実現するために、2回の対面講義とVRディスカッション動画を撮影しました。

 

事例紹介 ようこそ、科学技術コミュニケーション(2018)

gaccoにおいて2018年3月に、オープンエデュケーションセンターCoSTEP部門 川本先生を中心とした9名の講師陣による科学技術コミュニケーションの方法論についての講義「ようこそ、科学技術コミュニケーション」を開講しました。

eラーニング部門は映像教材を1から作るために教材設計、収録・編集、PV制作、開講後の運営を担当。教材は利用希望があった企業のファシリテーション演習予習や本学での予習動画として再利用されました。教員からは実施しているカリキュラムを体系的に再考するのに役立ったと伺っています。さらに2018年度の選科応募者が倍増、MOOCで好成績を得た受講者が通常カリキュラムの受講者となる等、広報にも役立ち、科学技術コミュニケーションのニーズを掘り起こすことができました。