OECの成果(2023年度)

オープンエデュケーションセンター[(OEC)オープン教育開発部門」では、ハイブリッド型学習の「共同開発」、ハイブリッド型学習の「実施支援」、先進的教育技術の「研究開発」を活動の三本柱としています。これら3つの活動成果を報告いたします。

共同開発

ハイブリッド型学習の「共同開発」では、教職員のニーズに応じて「オープン教材(OER)の開発」、「オープン教材を用いた授業支援」、「学習環境の提供」を行っています。


オープン教材(OER)の開発


開発コンテンツ一覧

開発したOERについて、以下に紹介します。
2023年度は、53講義、365動画を制作、6講義の授業支援を行い、7講義の英語教材を制作しました。

累計コンテンツ数

OECが設置された2014年から2023年度までに開発した OER のコース数、コンテンツ数、英語コンテンツ数の推移を下図に示します。
数値の定義は以下の通りです。

  • コース数:開発した OERの講義数
  • コンテンツ数:開発したOERのコンテンツ数
  • 英語コンテンツ数:上記のコンテンツ数のうち英語を用いた OER の数
2023 年度における著作権処理の内訳

2023年度(2023年4月~2024年3月)に著作権処理を実施した68講義(内補償金制度の対象となる 講義は6講義)の著作権処理の内訳について、著作物数(自作のものを含む)は2886件であり、そのうち第三者著作物は1218件でした。これらの第三者著作物について、権利者からの許諾不要で利用可能だったものは705件(58%)となりました。また、 利用許諾申請については、284件の申請を行い、無料で許諾が得られた件数は181件(64%)、有料で許諾が得られた件数は93件(32%)、許諾が得られなかった件数は10件(4%)となりました。

また、授業目的公衆送信補償金制度(以降、補償金制度)対象の講義(6件)については、著作物数(自作のものを含む)は352件であり、そのうち第三者著作物は160件でした。これらの第三者著作物について、補償金制度の定める要件を満たすことで利用可能となったものは150件(94%)であり、利用許諾申請については、1件の申請を行い無料で許諾が得られました。

取り扱った著作物件数と処理の内訳(補償金制度外)
取り扱った著作物件数と処理の内訳(補償金制度)
2023年度開発教材

スペイン語
外国語教育センター 増田哲子 准教授/パイチャゼ スヴェトラナ 准教授/ロペス サンティアゴ 准教授(現 早稲田大学)
大学院国際広報メディア・観光学院/メディア・コミュニケーション研究院 石黒侑介 准教授

第二言語を学びはじめる学生に向けたスペイン語のイントロダクションおよびスペイン語の演習教材を制作しました。
紹介動画では、スペイン語が話されている地域や日本語とスペイン語の関係など、どのような言語なのかについて紹介しています。また演習用教材は,母音や子音の発音に関する説明と発音練習の動画を組み合わせて制作しました。あいさつ・会話では,スペインや会話のイメージ化を図るために,AIで生成した画像を取り入れて制作しました。

ロシア語
外国語教育センター ブンティロフ ゲオルギー 准教授/サヴィヌィフ アンナ 非常勤講師

ロシア語担当の教員と共同し、発音およびイントネーションを解説する動画を制作しました。本教材では、とくに日本語の影響による発音の誤りを修正することを目的としています。解説と同時に、発音器官の動きを解説するアニメーションを採用している点、イントネーションの型をバーで表現している点が特徴的です。母音と子音の正確な発音を学ぶため、ネイティブ講師による発音練習が含まれています。また、発音器官をトレーニングし、難しい音の発音を容易かつ美しくする「調音練習」のセクションも設けています。

北海道大学CST 倫理講習
病院先端医療技術教育研究開発センター 村上壮一 副センター長・助教

主に医学部・歯学部で実施されているCST=Cadaver surgical training: ご遺体を使用した手術手技研修における、倫理的な配慮やCASTLabの使い方手順を学習する映像教材を制作しました。OECではトレーニング前に行う講習のeラーニング化に向けて計画立案、教材設計、撮影、編集を担当しました。

「AIと人間社会」リカレントプログラム
大学院教育推進機構 リカレント教育推進部/人間知×脳×AI研究教育センター(CHAIN)/他外部講師5名

「AIと人間社会」プログラムが本学のmoodleにおいて開講されました。本講義は、AIのELSIについて基本的な論点と近年の事例を学ぶ「AI倫理」コース、AIと脳科学と人文社会科学が交差する地点に生まれてきた新しい研究事例について学ぶ「AIから広がる知:異分野融合」コースで構成されています。OECでは、本プログラムで提供されたオンライン講義映像の収録、編集、一部作問を担当しました。

インド言語・文化基礎(STSI)
工学研究院 髙橋航圭 准教授(代表教員)/ラトール旅子(担当教員)

STSI言語・文化基礎ではSTSIプログラム参加学生を主対象とし、インドの学生との共同科学技術活動へ参加するために必要な言語と文化の基礎を学ぶことを目的としています。OECは2018年度~2022年度まで授業実施支援を行ってきました。2023年度には、これまで授業で行ってきた内容のOER化に向け、収録、編集および著作権処理を進め、2024年秋頃の公開を目指し制作を進めています。


学習環境の提供


開発した OER は、目的にあわせて、OECで管理・運用しているプラットフォームで利用しています。
主なプラットフォームは、北海道大学の教職員が利用する「教育情報システム(ELMS)」、北海道大学の学びを学外に向けて公開する「北海道大学オープンコースウェア(北大 OCW)」、誰もがネット上で講座を受講できる「大規模公開オンライン講座(MOOC)」の3つです。

教育情報システム ELMS・Moodle
教育情報システム(ELMS)は、北海道大学の教職員が利用する全学向けの教育学習システムです。

ELMS は学内に設置された 998台の教育用端末のほか、学生用のポータル機能や Moodle を用いた教育情報システム、Google Workspace を用いたグループウェアによって構成されるウェブサービスを提供しています。
北海道大学オープンコースウェア(北大OCW)
北海道大学オープンコースウェア(北大 OCW)は、北海道大学における「学びのいま」を公開する、コンテンツ配信プラットフォームです。2006年より本学高等教育推進機構で運用を開始したのち、2014年4月より OECで運用を引き継ぎ、継続的な改善を実施しています。2015年11月1日から2023年3月31日までの総ページビュー数は697,977回、総訪問者数は 130,583人です。

動画配信を主とする北大 OCW では、ストリーミングサーバーとして「Kaltura」を導入し、著作権の関係上、違法な動画ダウンロードができないよう管理しています。
大規模公開オンライン講座(MOOC)

MOOCとは、インターネット上で公開される、世界中、誰でも受講できるオンライン講座のことです。OECでは、映像教材の制作と教材設計、開講中のサイト管理、事務手続きを一手に引き受けています。本年度に開講したMOOC講座は下記の通りです。

地層処分の科学(2023)
工学研究院 渡邊直子 教授/他5名

gaccoにおいてMOOC講座「地層処分の科学」を2024年3月に開講しました。本講座は2020~22年に開講された「放射線・放射能の科学」の続編として企画され、高レベル放射性廃棄物の処分における「地下水シナリオ」での各種バリア材の研究について教えるものです。OECでは計画の立案、教材設計、撮影、編集、PVの制作、開講後の運営を担当しました。

 

実施支援

現在、さまざまな分野でデジタルトランスフォーメーション( DX )が推進されており、高等教育においても教育のデジタル化を通じた変革が期待されています。こうしたなか、本学は2021年度に文部科学省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン( Plus-DX )」に採択され、「デジタル・シームレス学習環境」を実現することを目標に、オンライン教育環境の基盤整備、学内キャンパスネットワークの整備拡充、ハイブリッド型授業の実施・評価の手法開発と普及、地域におけるオープンな教育プラットフォームの開発を含む全学的なオンライン授業の実施を支援してきました。


ハイブリッド型授業の設計手法開発・支援


ハイブリッド型授業における授業設計を、教員からみた学生への教授行為について整理し、これまでの対面授業を分析し、教授者の目線からブレンド型授業を考案する手法「リビルド法」を開発しました。
>> 効果的な授業の実施方法

また、リビルド法を利用して既存の対面授業をハイブリッド型授業に設計しなおす教員研修プログラムを開発・実施しました。
教員研修には事前・事後課題を設け、事前課題ではデザインシートを用いた授業の現状分析を、教員研修ではデザインボードを用いて授業の改善案を検討する活動を行いました。研修後、提出されたデザインシートには、教員研修の支援者から「よいと思った点」「さらに授業をよくするための改善案」について文書によるフィードバックを返却するとともに修了証を発行しました。
>> 【開催報告】オンライン教育セミナー「ツールキットを活用した授業設計と改善」


授業デザインツールキットの開発


リビルド法による授業設計では、授業の流れを可視化して分析し、整理することが重要です。そのため、これまでの授業をハイブリッド型授業に組み替える過程を記述する「授業デザインシート(以下デザインシート)」と、5つの教授行為の組み替え作業を行う「授業デザインボード(以下デザインボード)」を開発しました。
>> 授業デザインツールキット


ハイブリッド型授業ガイド


2020年より、本学におけるオンライン授業の実施支援を継続的に行っています。その一環として、ハイブリッド型授業ガイドを構築し、情報提供を行っています。今年度は、4月9日に学内向けの FAQ を公開しました。
>> 北海道大学におけるハイブリッド型授業ガイド


講習会、勉強会、セミナーの実施


上記のような教員研修プログラムの他、ハイブリッド型授業に関わる話題を中心に、講習会・勉強会・セミナー・フォーラムを開催しています。
>> NEWS


ハイブリッド型授業支援


学内でハイブリッド型授業の導入と実施について、動画教材開発や運営について支援を行いました。

研究開発


共同研究


OECでは、教材開発のみならず、動画教材を用いた教育手法など研究開発を行っています。これら研究は授業開発・サポート、MOOC など講座開講の結果についての分析など、センターの活動を改善し、新たな開発を行うサイクルの一貫に位置づけられます。

株式会社ドコモgaccoとの共同研究(2023年度〜現在)

リカレント教育の高度化を目的として株式会社ドコモgaccoとOECが連携協定を締結し、以下の活動を実施しました。

  1. 実用的なスキルから知的好奇心を刺激する教養まで、リカレント教育コンテンツの共同開発
  2. オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型でのリカレント教育方法の確立
  3. オンライン学習サービス「gacco」の学習者データの分析

学会発表


オープン教育開発部門には2名の博士研究員が在籍し、開発した教材を活用した研究開発を行っています。本年度の学会発表実績を以下に示します。

  • FD導入場面におけるゲームの提案(日本教育工学会春季全国大会/小林和也、田中宏明、杉浦真由美、重田勝介)

過去の成果